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雑文

so・u・sa

so・u・sa
先日、といってもおそらく3週間以内のことだと思う。
雨は降っていなかった。降り出しそうな空だったかもしれない。

垂水にある実店舗に行く前に、JR垂水駅から北へ、横断歩道を渡り、道路の左寄りを歩いて郵便局に向かっている途中で、一人の男性と目があった。身長は僕よりやや高く、髪は僕より短い。
彼は僕とは反対の歩道を僕の進行方向とは逆方向に歩いている。
お互いに「おやっ」て顔をして、記憶の探り合いをし始めるのだけれど、彼にも僕にもお互いが誰だかわからないまま、どちらも同じように目を見ながら、すれ違うことになる。

僕はしばらくしてから気になって立ち止まり振り返ると、彼も同じように立ち止まって、カラダをやや進行方向に向けたまま、振り返って僕を見ている。

うーん、過去に埋もれてしまった記憶を探ってみたけれど、浮かび上がってくるものが何もない、と彼と僕の顔が表現していることがお互いにわかる。

こういうときはどうすればいいのかな。
「うまく思い出せないのですが、どこかでお会いしたことがありませんか?」と彼に声をかける。
いや、距離的に離れすぎてしまった。
いや、相手が魅力的な女のコだったら、そう話しかけたかもしれないけれど。
いや、お互いにいつまでも探り合いをしている相手なら、経験上、どちらかが思い出す。知っている人か、勘違いか、と。

僕は人の名前を覚えるのが得意じゃないのだけれど、一度でも出会って話をしたことがある人の顔をほとんど忘れることはないので(「ほとんど」の範囲内に入らず、忘れた人はごめんなさい…)、きっと彼とはどこかで会って、何かしら言葉の交換をし合ったんだと思う。
それは遠い昔のことかもしれない。

わからないまま、彼との物理的隔たりは大きくなる。記憶と同じように。

そんなことを思い出した。