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もらっても扱いに困る名刺

もらっても扱いに困る名刺

特殊な形状のマッチがあるので、「マッチ箱名刺」というような特殊形状の名刺があってもいいよなって、僕は思う。
そして、僕は今、企画段階にあるのだけれど…、と書いてしまっても問題はないと思う。
ブックマッチ・タイプの名刺、マッチ箱の中箱を取り出して外箱を折りたためば名刺サイズになるという名刺。
そういう類の「マッチ箱名刺(僕が勝手にそういう名称を付けているだけです)」を制作・販売している人や会社が存在するから。

渡されて印象深いとは思うのだけれど、扱いに困るよな、って思う「薄型マッチ箱名刺」なるものをどのように存在させるか?

「名刺スキャナー」というものが存在して、名刺をデータ化できる時代に、そして、電子名刺なるものが存在し、名刺のペーパレス化など、今後、「名刺」の意味も変わってくることだと思う。

まあ、僕はどんなに印象的な名刺をもらっても、その人に惹かれる部分や「趣き」がなければ、その名刺は意味をなさない。
2度と見ることのない名刺、どうして持っているのかわからない名刺は今までに何枚も存在した。
僕の名刺だって単なる薄い紙でしかなく、午後の明るい時間に空に浮かぶ月ほどの風情も持ち合わせない人物なのかもしれない。

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時間軸

時間軸

 僕は再び、11のパーティションで区切られたうちの1つの小さな診療室で青竹色の白衣を着た白髪交りの男と向かい合って座っている。
彼の隣には前回の診察の際にはウサギの着ぐるみを着ていたけれども、今はバニーガール姿に青竹色の白衣を纏った看護師が天井から吊されたブランコに乗って、前後にゆらゆらと揺れている。
僕はバニーガール姿の看護師が気になり、時々、目で彼女を追った。
「ああ、このことなら気にしなくていい」と彼は言った。「暑くなってきたからね」
「これも<ずれ>のせいですか?」と僕は質問をする。
「いえいえ、<ずれ>ではありません。だから気にしないでもらいたい」と彼は艶を消したシルバー色のボディのボールポイント・ペンでカルテに僕の読めない文字で何かを書きながら僕に向かって言った。

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 ありがとう、デジャヴュ。

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「自分の選択が未来において、重大な誤りであると気がついたキミは、過去にタイムトラベルして、修正しなければならない過去を修正し、修正した過去が正しい未来へつながる過去からの時間軸を現在まで歩み直している。そしてその後も過去において、修正を試みている、と考えたことはないかな?」と疲れ切った目をして、消耗しきったように彼は弱々しく微笑む。

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 僕は、時間を、かけて、その、説明の、意味を、理解しようと、する。

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 今、見てる世界、生きている世界が現在のモノであるという確かな認識が揺らぐ。
「誤った選択のために、過去を修正しながら、現在を再構築するためにいるとする僕は、今、現在に至る過去の中に存在しているのですか? それともそれが現在なのですか?」
「よい質問だ」彼はそう短く答えると、しばらく黙り込んだので、僕は仕方なく次の質問をする。「過去といっても、周りを見渡しも昨日存在したモノは今日も存在しつづけていますよ。電車の車両だって昨日と同じように存在しているし、携帯電話だって存在する。この病院の外観だって、なにも変わってません。東京スカイツリーは存在しています」と僕。
「過去といっても、そんなに昔にさかのぼる必要もない。13日前であっても、5日前であっても、1日前であっても、極端に言えば、1分前でもよいわけなんだよ」と彼はややため息まじりに言う。「1秒前、というのは考えに混乱を起こしかねないので、考えなくていい」

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 僕はウサギの看護師に視線を向ける。彼女はにこやかな表情を顔に浮かべ、僕を見つめる。まるで、やっとわかったの、とでもいうような微笑み。しかし、それは氷上で見せるフィギュアスケートの選手の顔の表現と変わらないのではないかとも僕は思う。
「よくわからない」と僕は言った。「おおよそ、1年前には、現実と非現実の境界線と言われた。そして今度は現在に続く過去を未来への正しい選択のために修正しながら生きているという時間軸の話を持ち出す」
「症状が悪化したわけではない。別の症状が現れただけのこと。どちらも現実と非現実のどちら側にいるのかよくわからないことには代わりがないはずだね」と彼は僕の目を覗き込みながら言った。「血圧を測るね」
僕は無意識に右腕を差し出す。
「上が110、下が70」と彼はカルテに書き込む。そして胸の音を確認する。
「痛みは?」と彼は訊く。
時々、ひどい痛みがあるけれど、最後がいつだったのか覚えていない、と僕は答える。
その痛みの起こるタイミングに気をつけるように、と彼が言う。有効な薬もないし、対処方法はない。時間が経過するのを待つだけでいい、と続ける。
わかっています、と言おうとして、その言葉を消去する。待つことには慣れている。

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 僕は診察室のドアの方を向いて、扉を開いて外に出たとき、前後にゆらゆらと揺れてるブランコに乗っていた白衣姿のバニーガールが僕について診察室から出てきた。そして、ウサギが初めて、僕に話しかける。
「進むだけ。ただそれだけ。方向も時間も気にしなくていいの」

「通信障害」の解消しない1日が終わりに向けて、ディジタル表示の時計の数値を加算していく。

内容はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません、とお断りしておきます。

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雨が続く季節が来る前に

雨が続く季節が来る前に

誰もが多くのトラブルを抱えている。僕だって多くのトラブルを抱えている。カードゲームの悪い手札のように。
いくつかのトラブルは去っていったし、いくつかのトラブルはまだ手元に残っている。誰だってそうだ。今のところ雨の降らなかった年はない。未来については不確定。

昔、撮影した神撫山の上に浮かぶ雲。
上空は青系の、そして山の稜線あたりの空はオレンジ色系の色が染み込んだ夕景に、鍛えられた両腕の上腕二頭筋と鍛えられた太い首と鍛え上げられた下半身のような雲。

僕はこんなにたくましくはないし、鋼のココロを持っているわけでもなく、雲のような存在がふさわしい。

今日は雨。
雨が続くであろう季節が来る前に行きたいところがある。

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返照

返照
夕刻の太陽が溶け込むように三井アウトレットパーク「マリンピア神戸」のガラスを入り口部分に配した建造物の中に沈んでいく。

何らかの同一性と統一性をもつはずの存在自身としての自分がいるはずで、僕は自分の感覚を内面に向けながら、空を仰ぎ見る。
明らかにならない思いが消えかかる陽光がもたらす5月の冷たい風に浮かび上がる。

言葉にもっと自由度があり、その言葉を僕がもっと要求に見合うくらいうまく扱うことができるならば、思いは伝えることができるのだろうか?
僕の言葉は左右が正反対の虚構世界のほうで現実味を持つのかもしれない。

この同一性と統一性の欠落感はいったいなんだ。

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通信障害/太陽の乱心

通信障害/太陽の乱心
“毎日繰り替えされる日の出は確率的事象ではない。日の出は、いついかなるときも、あくまで宇宙空間における太陽と地球の相互位置関係によって決定される。この因果のメカニズムを理解さえすれば、明日も、あさっても、しあさっても、太陽が昇ることを確実に予言できる。そればかりではない。日の出の正確な時間さえ予知できる。わたしたちは日の出の時間を推測するだけではなく、あらかじめ知るのである。下方に流れるという水の性質も確率的事象ではない。この性質は、一定不変と考えられる地球の引力の結果である。しかし、因果律が役に立たず、確率に助けを求めなければならないような領域はたくさんある。”

1975年に発表され、日本ではサンリオSF文庫から1980年に翻訳刊行されたロバート・シルヴァーバーグの長編小説「確率人間(翻訳:田村源二)」にそのような一節がある。

今日の神戸の街はまだ明るいうちはもう夏の日を思わせる暑さ。
僕たちはもう、日の出の正確な時間をあらかじめ知っている。
その”明日も、あさっても、しあさっても”地上を照らすであろう地球からおよそ1億5,000万km離れている太陽で爆発。

「太陽でスーパーフレアは起きるのだろうか?」とblogに書いたのはほぼ1年前の2012年5月18日

2013年5月13日から15日までの間に、「Xクラス」と呼ばれる通常の100倍以上という太陽フレアが、すでに4回発生している。
その影響なんて、僕にはないはずなのだけれど、今、僕は「通信障害」状態。
“Hello! Hello!”

今後2週間かけて今回のフレアを起こした黒点は太陽の端から太陽の正面を横切っていく。