カテゴリー
モノ 雑文 文具

ここから始まる/卒業論文

ここから始まる/卒業論文

「村上春樹の物語世界の時間・空間・レトリック」というのが大学での僕の卒業論文。
この論文のタイトルにまつわる話は2012年2月29日のblog「4年に1度の1日長い2月最後の日/2012年」に書いたので、興味があれば読んでいただきたい。

「序」と「結び」に挟まれて、
I. レトリック

1. 固有名詞

(a) 固有名詞の欠如
(b) 過剰な固有名詞
(c) 固有名詞が表現するもの

2. 対置法

II. 登場人物

1. 感性のベクトル
2. 受動性
3. ほどよい無関心

III. 小説に置ける制度

1. 登場人物という役
2. 制度

(a) 虚構
(b) 出口

という構成で「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」、「羊をめぐる冒険」の3部作を中心に分析したモノ。
村上春樹の小説がベストセラー・リストに登場するものの既成の文壇内部で評価が一般的に低かった頃の話だ。

カートリッジインク式のパーカーの万年筆で書いたのか、ボトルインクよりインクを吸い上げる吸入式の万年筆で書いたのかは覚えていないけれど、とにかく、万年筆を使った。

まあ、それだけのことなのだけれど、僕はこの卒業論文を時々、読み返す。
僕のblogの文体は村上春樹の初期3部作を研究した結果、出来上がったモノでもあるから。

* blog内、全て敬称略です。

カテゴリー
雑文

誰かじゃなく、誰でもなく。

誰かじゃなく、誰でもなく。
空の面が凪ぎ、地上の風が止まると、こじれるような暑さが僕のそばで足を止める。
やあ、と挨拶をしてみるものの、返事はない。

PETボトル入りの炭酸水を片手に少し遅れて部屋に入ると、彼女の姿はもうなくて、僕は辺りを捜してみるのだけれど、見つけることができない。そして、それはもうかなり前のこと。

長い影が地面に作られ始めると、陽光が空を染め始める時間。
彼女はそんな時間にいなくなったわけで、必要だったのは僕ではなかったということだろう。

雨の日にいなくなってくれれば、僕は少しは救われたかもしれない。

時々、彼女宛の手紙を書こうと思う。もちろん、宛先がわからない手紙、行き場所を失った「出さなかった手紙」となる。
眠れない夜に時々、ベッドと壁の隙間から、ココロの中に彼女の痕跡が忍び込んでくることがある。

“キミへの想いだけは消さないよ”

カテゴリー
雑文

補完

補完/2013年5月24日
カメラを構え、それを職業とする人の中には、もっと洗練された感性でもって、光景や人物を切り取ることができる人がいて、そして文章を書き、それを仕事としている人の中には、もっと表現力があって、何気ない光景や普通の人々を丁寧に描写できる人がいる。
それがプロフェッショナルの流儀だと思う。

僕はどちらにも属さないことを認識している。
そして僕は欠けたものをお互いに補完する試みを行う。

東の空に浮かんだ目立たないように目立つ「月」が主役になる前、そして「太陽」の色彩豊かな舞台のカーテンが降りる前。

この時間を僕は気に入っている。

カテゴリー
モノ 雑文 音楽

光の記憶、影の記憶、そしてアンリ・デュティーユ

光の記憶、影の記憶、そしてアンリ・デュティーユ
フランスの20世紀を代表する作曲家であるアンリ・デュティーユ(Henri Dutilleux)の「時間の影(The Shadows of Time)」は小澤征爾の委嘱により作曲された1997年の作品。

1. 時間の影/ 時間
2. 時間の影/不吉な大気の精
3. 時間の影/影たちの記憶「アンネ・フランクと世界中の子供たち、その無垢なる魂に」間奏曲
4. 時間の影/光の波
5. 時間の影/蒼いドミナント?
6. 時間の影/拍手

という6曲、約21分の小作品。

クラシック音楽のライブ録音盤やFM放送で聴く演奏会の終了後に時々収録されている「拍手」に僕は「雨音」を連想する。
6曲目の「拍手」は本当に「拍手」だけなのだけれど、それは「雨の降る音」に似ている。
今日、改めて聴いてみた。

「アンリ・デュティーユ」は「アンリ・デュティユー」と表記されることもあるのだけれど、このCDとは別にもう1枚、デュティーユの作品のCDを持っているはずなのに、思い出せないし、見つけることができない。

今日の垂水に降り注いだ光は何を記憶し、その光によってできあがった影は何を記憶したのだろう。
時間に影があるとすれば、それはどのようなものなのだろうか?

今日、2013年5月23日の朝日新聞大阪本社版(朝刊)に「22日、パリで死去、97歳」と彼の逝去記事が載った。
さよなら、アンリ・デュティーユ。

* blog内、全て敬称略です。

カテゴリー
雑文

赤い月が宿る

赤い月が宿る
5月22日の1つめの夜が2時間ほど過ぎた頃、赤い月を見つける。
丸い地球をとりまく大気の厚さの違いと光の性質の違いが組み合わされた現象。

しばらく眺めていると赤い月は黒い空に薄くなって溶け込んでいく。

ねえ、キミはどこにいるの?
まだ同じ空の下に存在しているよね。