空の面が凪ぎ、地上の風が止まると、こじれるような暑さが僕のそばで足を止める。
やあ、と挨拶をしてみるものの、返事はない。
PETボトル入りの炭酸水を片手に少し遅れて部屋に入ると、彼女の姿はもうなくて、僕は辺りを捜してみるのだけれど、見つけることができない。そして、それはもうかなり前のこと。
長い影が地面に作られ始めると、陽光が空を染め始める時間。
彼女はそんな時間にいなくなったわけで、必要だったのは僕ではなかったということだろう。
雨の日にいなくなってくれれば、僕は少しは救われたかもしれない。
時々、彼女宛の手紙を書こうと思う。もちろん、宛先がわからない手紙、行き場所を失った「出さなかった手紙」となる。
眠れない夜に時々、ベッドと壁の隙間から、ココロの中に彼女の痕跡が忍び込んでくることがある。
“キミへの想いだけは消さないよ”