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千枚の葉

千枚の葉

「ミルフイユのようにいくつもの物語が重なり合うんだけれど、全然甘くないんだよ」と誰かが言う。薄切りの肉や魚や野菜の重なりをなす料理についても「ミルフイユ」という表現は使うので、ここで使っている表現は、パイ生地が何層も重なったフランス菓子を意味する。

僕が書く物語にはいくつもの重なりも、平織りの綿織物のような糸の交差すらない。それは僕の別の物語とは全く異なる時間と空間の中で展開されるからなのだけれど。
どちらの物語にも「必然」はない。

あるのは「錆」と「有刺鉄線」と交差することのない「螺旋階段」。