今日の神戸は煙るようにかすんで降る雨、ぱらぱらと降りこぼれる雨の日。
空の面のいみじうのどかに、飛行機が長い直線を描いたのは昨日のこと。
記憶の在庫。画像の在庫。時の倉庫。
西に傾く光射す頃、建物の西向きの面を染め、反射する光も衰えはしない。
外界をとりまいている細長く折れ曲がった「時」の通路を僕たちはお互いに異なる速度で動いている。「時」の進む速度が同じだとしても。
夕陽でオレンジ系の色に染まる洋館は「旧ジョネス邸」で、1919年にイギリス人ジョネス氏の私邸として建てられ、1963年のJR神戸線の拡幅により、後の所有者である山田作之助(故人)により現在の地に移築・保存された、塩屋の海岸沿いに残る洋館です。
現在は山陽電鉄・JR各「塩屋」駅から南、国道2号線を越えたところに位置しますが、元々は現在地より500mほど、東にあったらしい。
「旧ジョネス邸」の南側はもう塩屋の海です。
旧ジョネス邸の2代目所有者であった山田作之助は、旧神戸地方裁判所庁舎の保存を主張するなど、近代洋風建築の保存についてその本質を見通し、それに基づくしっかりした考え方をなさっていたらしい。
そして、山田作之助亡き後も、今に至るまで管理人の方が大切に守ってきたという経緯があります。
神戸空襲、ジェーン台風、阪神淡路大震災と様々な危機も乗り越えたその「旧ジョネス邸」が10階建てマンションを新築する計画のため、取り壊されるという危機にあります。
昨日、塩屋駅で途中下車したのはこの「旧ジョネス邸」を撮影するのが本来の目的でした。
神戸市内では「北野」に次ぐ洋館の街「塩屋・垂水」。
北野地区に比べて、「塩屋・垂水」の異人館は神戸市としては保存するということに注視していないように思うのは僕だけでしょうか?
神戸市は財政難で、この件に関しては大きく関わることを避けているようですが、少なくとも、市内の異人館・洋館・歴史ある建造物を守る条例を制定することはできたと思います。
神戸市がダメなら、兵庫県が。それがダメなら、国が。まあ、行政には期待しない。
ナショナル・トラストで神戸・明石の海岸線を保護することはできないものなのかな?
「塩屋まちづくり推進会」では現在の「旧ジョネス邸」所有者である不動産会社へ保存嘆願書を送付しています。
僕がここを訪れた昨日には正面の門に既にマンションの建築計画書が大きく貼り付けてありました。
「旧ジョネス邸」に夜の闇がせまる前の陽光が優しく降り注いでいました。
* blog内、全て敬称略です。
ここがJR「塩屋」駅のすぐ南側であることがわかる人はそう多くはないと思う。まだ国道2号線を南に渡り切る前に見上げた夕景に1970年代後半にサンフランシスコで結成された「TUXEDOMOON(タキシードムーン)」で活動していた「Blaine L. Reininger(ブレイン・L.レイニンガー)」のアルバムを理由もなく思い出した。
僕は「TUXEDOMOON」のリリースした曲の数曲を除けば、彼らのアルバムをどうしても受け入れることができなかったのだけれど、「Blaine L. Reininger」に関しては別だった。
1987年にクレプスキュールというレーベルからリリースした「Byzantium」のLP音源をカセット・テープに録音していたので、2013年4月21日のblogに書いたSteinberg Japanのノイズ除去ソフト「CLEAN 4.0」でCD-DA化した。
1. Rolf And Florian Go Hawaiian
2. Blood Of A Poet
3. Teenage Theatre
4. Some Fine Day
5. Japanese Dream
6. Too Cool To Die
7. Bird On A Wire
8. Rosebud
の全8曲はレイニンガーの気だるい声と揺らぐようなヴァイオリンの音色がシンセサイザーを多用したポップなリズムの中から溢れ出る。
blogを書くにあたって、webで調べたところ、2004年にLTM(4)というイギリスのレーベルから16曲入りでCDとして発売されていた。
16曲だって?
前半8曲は1987年リリース時と内容も曲順も同じだけれど、ボーナス・トラックとして、8曲追加されている。
16曲が収録されている「Byzantium」が欲しいと思う。しかし、考えてみると、追加された8曲の音源は未発表曲なんだろうか、レイニンガーの音源はほとんどカセットテープの中にあるはずだから、既に持っている音源かも知れないし、何といっても、「Byzantium」は1987年リリースの8曲で緊張感に満ちて、まとまりがある。
追加8曲はそのバランスを壊すことがないのかな?
クレプスキュールというベルギーのレーベルは本当に良質なレーベルです。僕はこのレーベルには「すべてがモノクロームの世界」という印象を持っている。今、どのような状態にあるのか、僕は知らないけれど。
セイコーホールディングス株式会社がまだセイコー株式会社時代に発売していた「TAKEO KIKUCHI」デザインの腕時計「V501-5H20」。
おそらく1990年代の腕時計。
電池交換を1度行ったような記憶があるのだけけれど、定かではなく、もう随分と長い間動いていない。今、電池交換をして動くかどうかわからない。おそらくオーバーホールは必要だと思う。
残念だけれど、今の僕は金属に対するアレルギーがあるので、腕にすることはできない。
時計の針が動くのではなく、文字盤が回転する。
時計中央のオレンジ系の色の円形部分が「秒」を、ブルー系の色の部分が「分」を、一番外側で表示面積が広いオレンジ系の色の部分が「時」を表す。
7時25分。秒はわからない。
アメリカで1966年から1969年に放送された「スタート・レック」の最初のシリーズ全79話の中で起きた中毒事件を分析した「未来における中毒史」という論文がアメリカ臨床中毒学会誌に掲載されたと2000年2月2日の朝日新聞にある。
筆者はテネシー大学南部中毒センターのペーター・チャイカ博士とオクラホマ州にある聖フランシス子供病院のウィリアム・バナー博士。
学会自体が柔軟さをもって受け入れることで、定評があるそうで、まあ、そんな論文も学会があってもいいと僕は思う。
その中に急激な変化を起こすなど生体時間に影響を与える「時間毒」という架空の毒が採り上げられているという。
最初の「スター・トレック」は何度か観たのだけれど、どの話の中で出てきたっけ?
「時」はどんな場合でも、生体にとって毒であることには変わりない、と僕は思う。
* blog内、全て敬称略です。