
北鎌倉の物静かな空間に「好々亭(こうこうてい)」という料亭があったそうです。
1993年に「フィルムアート社」から出版された小津安二郎著、田中真澄編「全日記 小津安二郎」にも「好々亭」の名が出てきます。
“北鎌倉に売家ある由 森と清水毎日記者 差配津島と家を見にゆく 道わるし
好々亭で昼めしをくひ 皆で月ヶ瀬にゆく
酩酊 茅ヶ崎に帰る”
マッチラベルに印刷されている朱色の文字が篆書の「壽」であることに僕が気がつくまでおおよそ15分くらい。
昭和39年の”好々亭庭こよみ”には”三月 梅見ごろ”、”六月 暮雨酌”、”八月 草虫集”、”九月 月の宴”などとあり、美しい庭を有し、喧噪から切り離された広がりがそこにあったことを窺い知ることができます。