「ああ、このことなら気にしなくていい」と彼は言った。「暑くなってきたからね」
以前、彼は同じことを僕に向かって言った。誰に対しても同じことを言うのかもしれない、と僕は思う。これからも同じことを繰り返すのだろう。
青竹色の白衣を纏ったバニーガール姿の看護師が彼のかたわらで、 天井から吊されたブランコに乗って前後にゆらゆらと揺れていた。
前回と異なるのはバニーガール姿の看護師が3人になったことだ。
その動きは「ニュートンのゆりかご」を僕に思い起こさせた。そして時間をかけてその意味を理解しようとした。
検査室に向かうために僕が診察室のドアを開けると、彼女たちの中のひとりが 「進むだけ。ただそれだけ。方向も時間も気にしなくていいの」と前回と同じように言った。
しかし、と僕は思う。「時間」は僕の側についてくれない。「時間」と友好的な関係を築き上げる方法を知らない、と。
診察時間には限りがある。