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遺失物拾得装置

遺失物拾得装置

冬ごもりに向けて町の食料品店へ買い物に出かける道ばたに – 人通りの少ない、誰も気にかけないあたりに -、コトコトと動くみかん箱くらいの大きさ – 「みかん箱」と書いてももうほとんどの人はみかん箱を知らない。それは小さいモノの比較対象として「マッチ棒」を用いることと変わりがない – の段ボール箱を見つけたので、捨てられた子猫か子犬かと思い、その箱を開けると中に擦り傷だらけのココロがたくさん詰め込まれていた。
多くの誰かが置き去りにしたココロを最近話題になっている「遺失物拾得装置」が集めたのかもしれない。
箱は持ち上げることが困難なほど重い。傷だらけのココロは重い、と何かで読んだことがあることを思い出した。
「遺失物拾得装置」が集めたモノは「遺失物移送装置」によって僕たちの知らない場所に運ばれ一定期間保管され、持ち主が届け出を行わない限り、元に戻ることはことはないとされている。
どうしてこんな段ボール箱が落ちているのかは僕にはわからない。
ココロの売買は厳しく禁止されているから、見つけたことを報告すると密売業者と勘違いされてしまうこともある。
僕は見つけなかった振りをすることもできず、冷たい空気の中でしばらく考えた。
そして僕は僕自身の擦り傷だらけのココロをその箱の中に押し込んだ。