“その間デュエインは彼女のかたわらに立ち、シャツのカラーをとめている金のタイピンの位置を直していた。彼女は目を丸くして、彼に指を突き立てた。40歳未満の男にはタイピンは絶対に似合わない、と彼女は思っていた(ジェイ・マキナニー「空から光が降りてくる」、翻訳:駒沢敏器、1997年、講談社)”
ジェイ・マキナニーの小説の中に出てくる「タイピン」はピンホールカラーと呼ばれる衿の中ほどに開けた穴にピンを通し、その上からネクタイを引き出すタイピンのことだと思う。
僕は持っていないし、使ったこともない。元々、普通のネクタイピンも好きではない。
家の中を片付けていたら、「プレーン・ノット」「ウィンザー・ノット」「セミ・ウインザー・ノット」という3種類のネクタイの結び方を示した一枚の紙が出てきた。就職した際に買ったいくつかのスーツに添えられていたのだと思う。
神戸市内から川崎市内の中学校に転校した時、詰め襟の黒い制服から紺色のブレザーにネクタイという制服に変わったからネクタイとの付き合いは長い。
結び方は折り紙と同じで図で示さないと説明しにくい。
僕はもうこの図を見なくても、鏡を見なくても、ディンプルの作り方に手こずることはあっても3種の結び方はできる。
今はもう僕がネクタイをする機会は減ったけれど、時々、ネクタイをして店舗で接客したいと思うこともある。