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そのエレベーターはいつも停止しているはずだ。

そのエレベーターはいつも停止しているはずだ。

目指す部屋は地下の2階にあった。扉は移動する。そして部屋も移動する。意図的に、そして慎重に隠されている。
僕は真新しいレバータイプのドアノブに手をかけて、廊下を見渡し、そこに誰もいないことを確認した。
扉を開くと窓も家具も装飾もない部屋に棒状のツイスト・ドーナツを食べながら羊男が立っていた。
「問題は常にある。謎は常にある。わかっているかい? だからここ場所ではない。あんたの目的の場所は移動したってことだよ。壊れないようにね」と羊男が言った。「32階へ行けばわかる」
32階? と僕は聞き返した。「このビルに32階はない。地下2階、地上5階」
1階のエレベーター・ホールからエレベーターに乗る、と羊男は言った。「そのエレベーターはいつもは停止している。あんたがエレベーターのドア横のボタンを押すとエレベーターが動き出す。ひとりだけで乗るように注意するんだ。他の誰も乗せてはいけない。乗ったら32階のボタンを押す。それだけのことだ」
僕は羊男のいる部屋の扉を閉めると振り返ることなく、1階のエレベーター・ホールを目指して歩き出した。