こういう手法もあるな、というマッチ箱です。
マッチ棒は入っていなかったので、撮影に際して手元にあるマッチ棒を使いました。
マッチ棒もちょっと驚きのある頭薬や軸であったならうれしいです。
赤地の箱に黒色で”PATISSERIE RENGAYA”、”フランス菓子レンガ屋 澁谷山手通り代官山寄り”と手書き文字が印刷されています。
印刷じゃなくて、一箱ひとはこ、手書きだったらもっとうれしいのだけれど…。
フランス菓子「レンガ屋」は東京・渋谷にあったフランス菓子・フランス料理の店で、銀座店、玉川店があったようです。
今では「レンガ屋」は”伝説のフレンチレストラン”と言われているそうです。
僕は行ったことがありません。譲り受けたマッチです。
代官山店は”完成までに35年という歳月が必要となった「ヒルサイドテラス」の1階にあったようです。「ヒルサイドテラス」の第1期工事が始まったのは1969年です。
広告とは消費されるものです。そして期限付です。
マッチも消費されるために存在します。使い終わったら捨てられていくのです。
ですからこうやって大切に残されてきた広告マッチのことを考えるとき、その人にとってどれくらいに意味があるマッチだったのか思わずにはいられません。
僕にとって意味のあるマッチがみんなの意味と同じわけではありません。
僕にとって意味のないマッチがだれかにとっての貴重な思い出です。
広告マッチに絶対的な価値は存在しないと僕は思っています。
“あるひとつの広告はいくつかの意味をもち、その広告をみる者にさまざまなメッセージを伝達する(大橋正房「広告化社会」、1982年、毎日新聞出版)”
追補(2019年5月27日):
SNSで「描いたのは佐野繁次郎」と知りました。佐野繁次郎はフランスの画家アンリ・マティスに師事した洋画家・パッケージデザイナー。