彼には氷が溶けていくのを眺めている時間が充分すぎるくらいあった。
彼は人々がたがいに かかわりを持って住んでいる世界に計算された美しさを持つグラスがあることを認める。やれやれ、と深いため息をついた。そこに容易には知りがたいたぐいの重要な意味はなかった。
彼はグラスに注がれた液体をひといきに飲み干したので、氷が溶けてできあがった冷たい水もほとんど残っていなかったが、新たな液体の注文をすることもせず、固体が液体化するのをつくづくと見つめ続け、そうすることで見知らぬ人々から何か価値のある問題を探しているように見えることを期待した。