僕の父がこの世を去ってから6年。
父の七回忌法要は母が横浜にある先祖代々の墓を管理する寺で行った。
平日の金曜日だったため、僕も僕の弟も参列できるはずもなく、横浜に住む叔父が参列した。
参列しなかった僕たち家族を母が非難するのは入り口も手続きも行き先も出口も間違えている。
父の最後の何年間は父にとっても母にとっても僕にとっても敗北の時間だった。
だからといって、父が愛読していた書物や文具をすべて処分したわけではない。
父は西村京太郎の推理小説を好んで読んでいた。多くは父が自分で処分していたけれど、残った西村京太郎の作品は僕が処分した。
テレビドラマ「刑事コロンボ」シリーズをよく一緒に観た。吹き替えを小池朝雄が担当した時代が終わって、僕にはしっくりしない時代にも時々一緒に観た。
ジョフリー・モットスミス著・金沢養(かなざわやしなう)翻訳で白揚社から出版された「数学パズルのAからZ」は父が大切にしていた本で、181問の数学パズルが載っている。この本の半分は「こたえ」で占められていて、父は解けた問題の番号を丸印をつけている。
1959年の「第1版第3刷」。当時の定価は「380円」。
国立国会図書館蔵書関西館「総合閲覧室」の書庫に保管されているようだけれど「利用不可」となっている。
ディジタルデータ化され、国立国会図書館デジタルコレクションに収められているが、「電子化時の注記 欠ページ:23-24ページ」だそうだ。
手元にある父の「数学パズルのAからZ」も25-28ページは抜け落ちそうな状態だ。20から30ページあたりが欠落しやすいのかもしれない。
僕が子供の頃、父がこの本から問題を出したものだ。
父は数学が得意だった。僕の弟も得意だった。僕は数学が苦手だった。
でも父にはそんなことはどうでもよかった。問題を解く助けとなる「始まり」の見つけ方を鍛えろと言いたかったのだと思う。
この本は僕の子供たちに受け継がれていく。
僕には未だに入り口も手続きも行き先も出口も見つけることはできない。
* blog内、全て敬称略です。