
「シネアド」「幕間広告」という映画館での広告分野(方法かな?)があります。
上映開始時間のブザーが鳴り、館内の照明がゆっくりと消えていったその後や映画と映画の合間の休憩時間に映し出される広告のことです。
最近の映画館では上映予定の作品の紹介が主となっているような気がしますが、僕が子供の頃には一般の店の広告が静止画像ですが、音声と共にスクリーンに映し出されました。
「名の無い茶房」もそうでした。ですから、僕は「名の無い茶房」へ行ったことがないのだけれど、場所とその名前は知っていました。店の名前が「名の無い茶房」ですから不思議に思ったのだと思います。そう記憶しています。そう思い込んでいるだけかもしれません。
今はその「名の無い茶房」はありません。
経木のマッチ箱には「新開地松竹座山側」と印刷されています。その松竹座は1976年の閉館・取り壊しとなりますが、この「名の無い茶房」のマッチ箱が経木から紙製になって「新開地元松竹座」の印刷に変わります。
当時の店の画像を探しているのですが、それはちょっと後回しにして、店の外観は経木のマッチ箱に貼られているラベルで確認できます。
神戸市の市内局番1桁から3桁までの時代を見てきた喫茶店だったのでしょうね。

これらのマッチ箱は実は「たるみ燐寸博物館」がオープンするかしないかという時期に、神戸に住むある方から譲って頂いたのですが、もう少し詳しく調べようと思ったのが間違いで、紹介が遅くなっていました。
「名の無い茶房」には茶房店名を募集するブックマッチがあります。

“御挨拶
新開地松竹座山側に皆様の憩の場
としてのシヤレタ喫茶店をつくり
ましたせいぜいご利用ください。
又当店は皆様に依つて店名をつけ
て頂くべく開店後1ヶ月間無名の儘
営業致します。どうかすばらしい
名を考えてください。
★尚当店採用のステレオ設備は皆
様に素晴らしい音響効果をお聞せ
することと思います。”
“入選賞.20,000円 1名
同名賞.入選者全部に記念品
最多数賞.コーヒセット半打 10名
〆切・9月25日
発表・9月末日
当店及神戸新聞に掲載”
そういう内容の懸賞広告マッチでした。
半打とはハンダーズ、つまり6回分ということですね。

“皆様待望の「名の無い茶房」
の名前はやっぱり
名の無い茶房 と
決まりました
どうか御引立の程を!!”
と、「名の無い茶房」は「名の無い茶房」となりました。
何十年か前の8月の終わりごろ、名前のないシヤレタ喫茶店ができたのでしょう。
一度行ってみたかったな、と思うのです。