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吉見敏治/こうべ壊滅 – 阪神淡路大震災 鎮魂の画譜 –

吉見敏治/こうべ壊滅 - 阪神淡路大震災 鎮魂の画譜 -

2012年7月最後の土曜日は暑さも昨日よりも一層増し、今夜は寝苦しくなりそうな室内の温度計の針が示す値にため息が出る。

1995年1月17日の朝が寒かったことは記憶に残っている。
「こうべ壊滅 – 阪神淡路大震災 鎮魂の画譜 -(1998年、神戸新聞総合出版センター)」は神戸市内に生まれた画家・吉見敏治(よしみとしはる)が阪神淡路大震災から1か月半を経過した頃から描き始めた作品を集めたモノで、彼は神戸市長田区にて罹災した。

この画集の出版にあたり、「上方芸能」編集長で、立命館大学教授(2006年退職)の木津川計が次のように述べている。

“ところが、大震災はそうした神戸観がいかに皮相的な見方だったかを告げてくれたのではなかったか。
思えばそうであった。山を削って海を埋め、消費を煽って快楽にふける都市こそ神戸であったことを忘れていたのだ。いや、神戸だけではない。どの大都市も、違う、この国すべてが、自然を虐待し、繁栄の栄華に酩酊していたのである。”

彼が時間をかけて描いた絵は写真以上に多くのことを訴えかける。

吉見敏治はあとがきにあたる「制作の日々」の中で次のように書き綴っている。

“運よく東京の友人から大量の紙(クラシック・ファビリアノ紙)”が届いた。彼からは「ただひたすら描くように」それだけの電話をもらう。背中を押された形で、これで他のことを犠牲にしてでもやらんといかんなと、気持ちが固まった。
さっそく、ベニヤ板を水彩全紙大に切断して画板をつくり、曲がりなりにも画材を揃えて現場へと向かった”

そして、

“被災民にとって、政治もどこか遠い国の出来事のように思えてならない。
1998年3月25日”

と締めくくられる。

* blog内、全て敬称略です。