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ポール・オースター/ムーン・パレス

ポール・オースター/ムーン・パレス

僕の場合、読書時間と通勤時間や移動時間に正比例するように今さらながら気がつかされることになったのだけれど、ポール・オースターの1989年の作品「ムーン・パレス(翻訳:柴田元幸、1994年、新潮社)」をやっと読み終えた。

話の内容は簡単で、僕の苦手なマトリョーシカ人形の(以前、blogに書いたのだけれど…)ような入れ子式に展開される物語にも、小説としての終わりがある。
当然ながら、マトリョーシカ人形にも終わりはあって、永遠には続かない。続くと僕はもっと困る。

小説以降の登場人物の世界は続くわけだけれど、とりあえず物語は閉じられる。

“消火栓、タクシー、車道から勢いよく立ちのぼる蒸気。どれもさんざん目にしてきた、脳裡に焼きついているはずの事物である。だがそういう考え方は、それらの事物が刻一刻変わるものだという事実を見落としている。光の強さや角度によって、物はつねに姿を変える。人が通りかかったり、突然さっと風が吹いたり、ひょんなところで光が反射したり、といった周囲の状況によって、その様相はいくらでも変化しうる。何もかもがつねに流動のただなかにあるのだ”

「今さらながら、1989年の作品を」、「ニューヨーク州になんて一度も行ったことがないにもかかわらず(っていうことは誰も知らないですよね)」と言われても僕にはうまく答えるに充分な手札を持っているわけでもなく、「ただ、図書館で棚を眺めていて、タイトルに惹かれて借りた」としか言いようもなくて、その辺りはいつものことと思ってもらえれば嬉しいことなのでそっとしておいてくださいね。

今夜、このblogを書き始める頃、タマネギをスライスしたその切れ端のような月が雲に見え隠れしていた。もうとっくに地平線の下に潜り込んでしまったけれど…。

* blog内、全て敬称略です。