あ、え、い、う、え、お、あ、お
か、け、き、く、け、こ、か、こ
さ、せ、し、す、せ、そ、さ、そ
た、て、ち、つ、て、と、た、と
な、ね、に、ぬ、ね、の、な、の
は、へ、ひ、ふ、へ、ほ、は、ほ
ま、め、み、む、め、も、ま、も
や、え、い、ゆ、え、よ、や、よ
ら、れ、り、る、れ、ろ、ら、ろ
わ、え、い、う、え、を、わ、を
ん
窓から外に向けて、遠くにまっすぐ届くように声を出す。
そこに意味を見いだしてはいけない。
近くにいる人にも遠くにいる人にも等しく聞こえるよう空気の振動などという物理学や音響学のことなど学問的な解釈はきちんと折りたたんで、単行本のページとページの間には挟んでおいて、どこまでもどこまでも、そしてただそれのみで、限りなく遠くまで、まっすぐに声を出す。
何度も何度も繰り返す。
それは浜辺の波のように。
それから、それから、それから…。
「聞こえない音は存在しないことと同じなんだ」とある人が僕に言った。「それに、正しく繰り返せば、必要なときにきれいな声が出る」
僕の声は「あちら側」にはもう届かない。
2012年の6月は今日で終わる。