1985年12月1日の日本経済新聞(日曜日版)「第二部[全面広告]/広告特集・酒 ワンダーランド」に村上春樹の短編小説「フクログマモドキ・バーの伝説」が載っていたことをご存知だろうか?
1985年は村上春樹の純文学書き下ろし特別作品「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が新潮社から刊行された年である。
そんな1985年といえば、ある人にとってはもう記憶の海に沈んだ過去のことかもしれないし、ある人にとっては頭を振れば記憶の箱からこぼれるように新鮮な過去かもしれないし、あるいはまだ未来の出来事にあたる過去だったかもしれない。
“「やれやれ」と僕は思ってため息をついた。
雪のつもったひどく寒い夜だったので、ため息は空中で白い空気のかたまりになった。ため息が目に見えるなんて、なんだか面白いものだ。そのため息にサインペンか何かで「やれやれ」と字を書きこむことができたら素敵だろうなと僕は思ったが…(以下省略)”
冬の雪の積もるココロも凍ってしましそうな寒い夜をそう表現している。
空中の白いかたまりとなったため息に僕だって「ためいき」ってボールポイント・ペンで書いてみたい (ボールポイント・ペンじゃ無理かな? そこはサインペンかペイントマーカーが最適化かもしれない…)。
ほんの小さな村上ワールド。
しかも「Hennessy-The original X.O」の広告のためだけに書かれたようだけれど、登場人物は”冷えた美味い生ビールを一杯飲み、目の覚めるように折り目正しいスティンガーを二杯飲んだ”としか語らない。
まだまだ、寒い日が続いています。
今日もblog「空に補助線を…。」に訪れてくれた、あるいは迷い込んだ僕にとってかけがえのない「読者」の皆様に、「今日も読んでくれて、ありがとう」、そして「おやすみなさい」。
そうそう、それで、「村上春樹/フクログマモドキ・バーの伝説」はどの短編集に収録されてるんだろう?
* blog内、全て敬称略です。