アメリカで製作された映画の中ではビリヤードは充分な脇役を与えられているけれども、ピンボール・マシンは脇役どころか、画面にほんの一瞬映るかどうか、あるいは会話の中でさりげなく、いや、気が付かない程度でしか出てきません。
しかし、この1977年にアメリカで製作された「TILT」という映画(日本では劇場未公開)ではピンボール・マシンをたっぷり堪能できます。
僕が記憶している中では唯一のピンボール映画(僕が勝手に命名しました)だと思うんだけど…。
ブルック・シールズ、ケン・マーシャル、チャールズ・ダーニング、ジョン・クロフォード、ジェフリー・ルイス、グレゴリー・ウォルコット…その他、と有名な俳優が出演している。
この映画の製作・監督・共同脚本を担当したルディ・デュランドは10歳のときから映画監督になりたかったようで、「TILT」はその夢だった監督初作品だったそうです。
しかし映画監督としてはこの1本を製作・監督しただけで、TVプロデューサーとしての仕事に転じたようです。
僕はこの映画を記憶にないほど随分と昔に日本のテレビ放送ではじめて観たのだけれど、当時子役だったブルック・シールズの日本語吹き替えがビールとワインほどのイメージ差があって、途中で見るのを止めたことを覚えています。日本初公開はNHKでのTV放映(吹き替え版)だったという情報があるのですが、僕はそれを観たのだろうか?
さて、吹き替えなしの日本語字幕付き英語版を観たいと思い、探して入手したのがこの中古のVHSテープ版というわけです(残念ながらDVD版は今のところ存在しません)。
字幕は映画の進行の主たる部分のみを日本語化したような感じで、日本語字幕は補助的なものと思ったほうがいいです。
内容についてはweb上にいくらでも情報があるので、ここではこの映画のタイトルについて少し書いておきます。
日本でテレビ放送された際のタイトルは「ピンボールの青春」、他にも「ティルト/青春ピンボール」というモノもあったようです(僕が観たときのタイトルは「ピンボールの青春」)。
ヴィデオ化にあたって「ブルック・シールズの プリティ・ギャンブラー」となっています。
原題は「TILT(ティルト)」。
「TILT」とはピンボール用語で「反則」を意味します。
ピンボール・マシンはプレイヤーが台を揺らして、ボールの物理的な動きを変えてもよいというルールがあるのだけれど、ピンボール・マシンの台が許容範囲を超えてあまりにも大きく動かされると台の内部に備えられた複雑な装置によって、「ねえ! ちょっと! 台を揺らしすぎよ!」と警告である「TILT」をスコアボードできらきらと点滅させて、ゲーム・オーヴァーを告げる。
「あっ、しまった」、「やれやれ」と思う瞬間でもあります。
ヴィデオのタイトルを「ブルック・シールズのプリティ・ギャンブラー」としたのは「TILT」ではピンボールに馴染みがない日本人には受け入れられない、「ブルック・シールズ(幼少だけれど…)が主演(本当はケン・マーシャルが主演なんだろうな)なので、ブルック・シールズというネーム・ヴァリューで販売しよう」ということにでもなったのではないかと勝手に想像します。
ヴィデオの表紙となっている子役のブルック・シールズがピンボール・マシン2台に背をあずけるようにして立っているシーンは映画の中にはありません。
お薦めして、「えー、なにこれ?」と言われるのもわからなくはないので、気が向いたら観てください。
映画の前半でピンボール・マシンの台を開けるシーンが出てくるので、じっくり観て欲しいのだけれど、ピンボール・マシンの衰退の一因でもあるこれだけアナログなマシンはないだろうというほどの配線とアナログ部品の多さにピンボール・マシンのメンテナンスの難しさを感じることができます。
しかし、このヴィデオを観るたびに、ピンボールの実機を全身を使ってプレイしてみたくなります。
ピンボール・マシンに関してはblogで過去にいくつか書いたのでblog「空に補助線を…。」内にある「検索」に「ピンボール」と入力して検索してもらえると僕としてはうれしいです。