僕は鉄道について詳しいわけではないので、普段、移動にJRを使っているにもかかわらず、なかなか気がつかなかったのだけれど、JR神戸駅の下り線ホームから停車場中心標という小さな標識とともに「東京起点/神戸起点」「東海道本線/山陽本線」という」標識が建っているのを見ることができる。
下りのホームなので「東海道本線の終点駅、及び山陽本線の起点駅」を意味することになるのだけれど、同一線上の線路にあるため分岐点というよりも通過点といったところだと思う。
枕木にも1本は「東海道」、もう1本は「山陽」と書かれている。
1984年に翻訳出版されたジャック・ヒギンズの小説「エグゾセを狙え(翻訳:沢川進、早川書房)」に次のような文章がある。
“「ときたま、人生とはなんだろうと考えさせられることがあるよ」
「ま、わたしがそれに答えることを期待しないでください」(…中略)「なにしろ、わたしはなんとなく通り過ぎているだけですからね」”
僕はいったい通過儀礼としての通過点ではなく、ごくありふれた通過点をいくつ見逃してきたんだろう。