“デパートの屋上で、ボーリング場やゲームセンターの片隅で、僕達はピンボールに出会った。ポップアートのようなバックグラスやプレイフィールド。バンパーやターゲットの間を駆けめぐる銀色のボールと、それらを待ち受けるフリッパー。ジュークボックスから流れるポップスのようなサウンド。イルミネーションのように輝くスコア。
僕達は、時間を忘れて、そんなファンタスティックなピンボールの世界に浸っていたものだ。
しかし、時は移ろい、多くのマシンが夜空の星のように現れ、そして音もなく消えていった。
僕達は、もう一度あのピンボールに会いたい”
「ピンボール・グラフィティ(発行:日本ソフトバンク出版事業部、1989年)」の表紙をめくるとそのような文章で始まる。
「ピンボール・マシンの写真と解説、エッセイ、ピンボール・マシンをプレイするためのテクニック、ピンボール用語辞典、及びピンボール・マシンリスト等」を収録した、おそらく日本で出版されたピンボール・マシンの最初で最後の充実した内容の専門書だと思う。
縦:約25.5cm * 横:約18cm * 厚み:約2.2cm のこの変則的なサイズの本には
PART 1:<ピンボール・マシン・グラフィティ>、<ピンボール・ウォッチング/ゲームセンターの地下倉庫で、デパートの片隅で>、<メイキング・オブ・バックグラス>、<エッセイ-村上春樹/「スペースシップ号」の光と影>、<リーフレット・グラフィティ>
PART 2:<レトロマシン・グラフィティ>、<エッセイ-すぎやまこういち/毎日がピンボールだった>、<定説 ピンボール史>
PART 3:<実践 ピンボール講座/基本プレイ&テクニック編/メカニズム編/ハイ・テクニック編>、<もうひとつのピンボール/ピンボール・シミュレーター>、<ランダム・インフォメーション>、<ピンボール・スポット・ガイド>
巻末に「ピンボール用語辞典」「ピンボール・マシンリスト」が収録されている。
今は絶版の書物(いつも絶版・廃刊の本、入手しにくい本の紹介が多いって?うーん、そう言われると困るんだけれど…)。
僕はピンボール・マシンの愛好家で大学生の頃や会社に勤めてから10年くらいデパートの屋上やゲームセンターでプレイしていた。
もう、デパートの屋上にゲームコーナはないし、ゲームセンターも閑散とし、ピンボール・マシンの実機もほとんど目にすることはなくなった。
ピンボール・マシンというゲーム・マシンが存在したさえ、もう忘れ去られようとしている。いや、忘れ去られてしまったのかもしれない。
どこかで、いつか、また会うことができるといいね。